高尿酸血症を治療しないで放っておくと、からだの中で多くなった尿酸が溶けきれずに関節などで結晶化し、痛風やさまざまな病気の原因になることがあります。
ときには、腎臓に結晶化して尿路結石や腎障害をひきおこします。
そのほかにも高尿酸血症の患者さんは高血圧症、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病を合併することが多く、動脈硬化が起こりやすくなるといわれています。
このように、本当に恐いのはこれら合併症なのです。
高尿酸血症ってどんな病気?
からだの中の尿酸が多くなる病気です
血液中の尿酸が正常の範囲を超えて多い状態を高尿酸血症といいます。
高尿酸血症そのものは、なんの症状もありませんが、放っておくと尿酸が関節や腎臓などで結晶のかたまりとなって痛風や腎障害を引き起こします。
●定期的に血清尿酸値をチェックしてもらいましょう高尿酸血症かどうかという診断は血液1dL(100mL)中の尿酸量(mg)すなわち血清尿酸値を指標にして行います。
血清尿酸値が7.0mg/dLを超えたら、定期的に尿酸値を測定することが大切です。
そして8.0mg以上になったら、必ず医療機関を訪れ、血清尿酸値だけでなく腎臓などのチェックもしてもらいましょう。
高血圧や他の生活習慣病を合併していたり、合併症がなくても血清尿酸値が9.0mg/dL以上の場合は薬物治療が必要です。
また、血清尿酸値の治療目標値は6.0mg/dL以下にするのがよいとされています。
異論はありますが、虚血性心疾患、脳血管障害などになりにくいためといわれているからです。
尿酸って何?
からだの中の老廃物です
尿酸はからだの細胞の新陳代謝やエネルギーの消費によってできる老廃物です。
尿酸のもとはプリン体という物質で、細胞や食品中などに含まれています。
わたしたちの体内では毎日プリン体から尿酸がつくられ、腎臓から尿に溶けて排泄されています。
●尿酸はからだの中で結晶化します尿酸は体内でたいへん溶けにくい性質をもっています。
そのため、増えすぎてしまった尿酸は溶けきれずに結晶化していきます。
この尿酸の結晶がからだのいろいろな部分に沈着して害を及ぼします。
高尿酸血症の原因は?
尿酸の生産と排泄のバランスが崩れることによって起こります
からだの中では、毎日ほぼ一定量の尿酸がつくられ、ほぼ同量が主に腎臓から尿中へ排泄されています。
しかし、尿酸がつくられすぎたり排泄されにくくなったりして、この生産と排泄のバランスが崩れると、体内に尿酸の量が増えすぎて高尿酸血症になります。
バランスが崩れる原因ははっきりとわかっていませんが、生まれつきの体質である場合がほとんどで、 その他に、肥満、飲み過ぎ、食べ過ぎ、ストレスなどの要因が関係していると考えられています。
●高尿酸血症には3つのタイプがあります。 尿酸が排泄されにくいタイプ 尿酸がつくりだされやすいタイプ 尿酸がつくりだされやすく、排泄されにくいタイプ痛風とは?
尿酸の生結晶が起こす病気です
痛風は、尿酸の結晶が関節に沈着して起こる病気です。
痛風の発作は、関節が赤く腫れ上がり激しい痛みを伴うのが特徴です。
ある日突然起こり、放っておくと尿酸の結晶が関節だけでなく腎臓にも沈着し、腎障害等を引き起こします。
また、痛風結節といわれる尿酸のかたまりが耳や足の親指、肘の関節などにできたりします。
痛風はこれらの病気の警鐘の役割をしているともいえるでしょう。
どんな人が痛風にかかる?
働き盛りの男性がかかりやすい病気です
痛風にかかるのは、ほとんどが男性です。
比較的几帳面で行動的なひと、仕事をバリバリやるひと、アルコールをたくさん飲むひと、肉食を好むひとに多いといわれています。
20歳代から50歳代に起こりやすく、女性や子供には少ない病気です。
痛風になりやすいかどうかは、多少遺伝的要素が関係しています。
また、最近は食生活の欧米化、アルコール摂取量の増加、体型の肥満化、ストレスの増加など環境要因の変化によって、患者さんの若年化が進んでいます。
高尿酸血症と痛風の関係は?
痛風のかげには必ず高尿酸血症があります
高尿酸血症が長く続くと結晶化した尿酸が、からだの中でいろいろな悪さをして関節炎を起こします。
これが痛風です。
したがって、痛風のひとは必ず高尿酸血症といえます。
逆に高尿酸血症だからといって、必ずしも痛風とは限りません。
現在では、健康診断などで成人男性全体の10%程度のひとが尿酸値が高いといわれています。
高尿酸血症・痛風と言われたら
食事できをつけることは?
①総カロリーを制限する
②標準体重にコントロールする
③乳製品を多く取る
…などがポイントです
肥満のひとほど血清尿酸値が高く、体重が下がれば血清尿酸値も下がっていくことが知られています。
したがって、カロリーのとりすぎに注意し、肥満を避け、標準体重にコントロールすることが重要となります。
また、体重のコントロールは高尿酸血症に対してだけではなく、高血圧症や脂質異常症(高脂血症)などの合併症の治療や予防にもつながります。
また、プリン体を大量に含む食品の中で、肉類・内蔵類・魚介類のとり過ぎは高尿酸血症・痛風になりやすいことが知られています。
しかし最近の研究で、同じ高プリン体食品でも、干ししいたけなどの野菜類は、ほとんど影響しないことがわかりました。
特に低脂肪乳製品や大豆などは、継続的にとると痛風の予防になるという報告もあるので、意識してバランスよくとるようにしましょう。
お酒は飲んでもよい?
お酒はひかえめに
アルコールはどんな種類でも飲みすぎると確実に血清尿酸値を上げます。
これは、アルコールが尿酸の生産を高めたり尿酸の排泄を抑制するために起こります。く
また、お酒の中に含まれるプリン体が原因になることもあります。
●休肝日を2日以上設けましょう
お酒を毎日飲むひとと、「休肝日」を設けているひととを比較してみると、アルコールの全体量は同じでも、毎日飲むひとの方が血清尿酸値が高いことが知られています。
なるべくお酒を飲まない日を設けるようにしましょう。
いずれにしても、食べ過ぎ・飲みすぎは避けましょう。
運動で注意することは?
激しい運動は避け、軽い運動をしましょう
肥満を避けるためにも、適度な運動は必要です。
水泳、軽いジョギング、散歩、サイクリングなどの有酸素運動は肥満防止の面からも必要です。
自分にあった運動を定期的に行いましょう。
しかし、激しい運動(無酸素運動)は逆に血清尿酸値を上昇させるので避けましょう。
●水分はきちんととりましょう
また、運動により大量の汗をかき、そのままにしていると血液が濃くなって血清尿酸値が上がったり、尿が濃くなって尿酸が溶けにくくなったりします。
汗をかいたら、水分を十分にとりましょう。
他の病気との関係は?
脂質異常症(高脂血症)や高血圧などの生活習慣病と合併しやすいので注意が必要です
血清尿酸値がたかいひとは、そうでないひとに比べて脂質異常症(高脂血症)の割合が高く、血液中のコレステロールや中性脂肪が多いことがわかっています。
また、高血圧症、脳血管障害、虚血性心疾患との合併が多いこともわかっています。
高尿酸血症・痛風だから、これらの病気になるというわけではありませんが、かかりやすい体質といえるので、注意が必要です。
このように、血清尿酸値はいろいろな病気のマーカーになりますので、定期的にチェックすることが大切です。
痛風発作が起こったら?
発作を抑える消炎鎮痛剤を飲みます
●痛風発作の応急処置
発作が起こった部位は、赤くはれて熱を持ちます。
このような場合は、患部を心臓より高い位置に保ち、冷やすと痛みが軽減されます。
暖めたり、マッサージしたりすると、かえって悪化するので避けましょう。
●痛風発作の前兆があったら、コルヒチンを飲みます
痛風発作の起こり始めには幹部がむずむずしたり、はれぼったくなったりする場合があります。
この前兆期にコルヒチンを1錠服用すると発作を防ぐことができます。
しかし、コルヒチンは起こってしまった発作にはあまり効果は期待できません。
また、大量に長期間服用すると重大な副作用を引き起こしますので注意が必要です。
●痛風発作時には消炎鎮痛薬を短期間服用します
痛風発作が起こったら、インドメタシン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ナプロキセンなどの消炎鎮痛薬を発作の間だけ短期間服用します。
痛風発作は通常1~2週間で大体おさまりますので、これらの薬を長期間服用し続けることはありません。
高尿酸血症の治療は?
血清尿酸値をコントロールします
食事の調節やアルコール制限などをしても血清尿酸値が高いひとは薬物治療を行います。
血清尿酸値を下げる治療は、痛風発作の痛みをとるだけの対症療法に対し、高尿酸血症・痛風そのものを改善する根本療法となります。
尿酸値を下げる薬はタイプによって使い分けます
①尿酸が排泄されにくいタイプ
尿酸の排泄を促進する薬ベンズブロマロンなど
②尿酸がつくりだされやすいタイプには
尿酸の生成を抑制する薬アロプリノール、フェブキソタット
自分の高尿酸血症のタイプにあてはまる薬を飲むことによって、効率よく治療することができます。
副作用の発現を抑えることにもつながります。
●高尿酸血症は長期間かけて治療しましょう
薬によって血清尿酸値は正常にもどります。
しかし、高尿酸血症そのものは非常に治りにくい病気なので、薬を飲むのをやめると、だいたい2週間でもとの高尿酸血症の状態にもどってしまい、長い間放置されると尿酸塩の沈着による合併症の恐れがあります。
ですから、根気よく薬を飲み続けることが大切です。
治療中に注意することは?
自分の勝手な判断で薬の服用をやめないようにしましょう。
もし勝手に薬の服用を中断していて痛風発作が起きたら、すぐに医療機関に行き、尿酸値を下げる薬の服用を中断していたことを医師に伝え、適切な処置を受けましょう。
●服用中の薬を医師に伝えましょう
●なにか異常があったらすぐに医師に相談しましょう
●尿酸値を下げる薬を飲み始めてから発作が起こることもあります
痛風発作が再発するのは、関節などにたまっていた尿酸が溶けてなくなる途中だからです。
治療を始めて半年間は発作が起こることもあります。
このような場合は尿酸値を下げる薬を飲みながら、痛みをおさえる消炎鎮痛剤をあわせて飲みます。
尿酸値を下げる薬の服用を中断すると発作がひどくなる可能性があるので注意しましょう。
尿路管理とは?
尿酸が尿に溶けやすくするために行います
尿酸は尿に溶けた状態で排泄されますが、尿が酸性だと非常に溶けにくくなるという性質を持っています。
そのために次のような尿路管理が必要となります。
●水分(お茶や水)を多くとって尿の量を増やしましょう
健康な人の尿量は1日1~1.5リットルぐらいですが、高尿酸血症や痛風の患者さんは尿量を1日2リットルぐらいにするとよいといわれています。
重度の腎障害や心臓病などで水分の摂取量を制限されているひと以外は、お茶を飲んだり、多めの水で薬を飲むなど、工夫するとよいでしょう。
●尿をアルカリ化します
尿酸は、中性~アルカリ性の尿には溶けやすい性質を持っています。
尿が酸性のひとは、尿をアルカリ化する薬があるので、アルカリ性に近い状態(pH6.2~6.8)にしましょう。
また、野菜、海草、牛乳などのアルカリ性食品を食べるように心がけましょう。
尿のpHは専用の試験紙で簡単に測定できます。
日常生活の注意点
1標準体重を保つ
2食事は総カロリーに気をつけ、乳製品を多くとる
3お酒はひかえめに
4水分を多くとる
5適度な運動をする
6医師の指示どおりに薬の服用を続ける
7定期的に検査を受ける。
お薬を飲んでいる期間中は、お薬の効果、副作用などをチェックするために尿酸値や肝機能を検査しましょう。
肝機能チェックのポイント
肝臓の働きが低下したときには、下記のような症状がよく見られます。
このような症状に気づいたときには服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
●尿の色が濃くなった
●皮膚や白目が黄色くなった(黄疸)
●食欲がなくなったり、体がだるくなったと感じる(けんたい感)
●体がかゆくなった
●発疹がでた
